ラーメン二郎 茨城守谷店

冬。それは人恋しくなる季節。

クリスマスが近づくと普段見慣れた街もイルミネーションで鮮やかに彩られ、寄り添って歩く恋人達を一層輝かしく照らしている。二人の幸せそうな雰囲気に耐え切れず、思わず空を見上げればどんよりとした暗雲が低く垂れ込め、僕の心の中を表現するかのように灰色のキャンバスはどこまでも続いていた。そんな小雨降りしきるある日の午後、守谷二郎へと足を運んだのだった。

店に着く頃、雨は止んでいた。

外待ち2人か・・・。まぁ2人位ならすぐ中に入れそうだな。そんなことを考えながらいつもの如く、寒さに震えつつ半口開けたアホ面で並んでいると、背中をトントンと叩かれた。

「あのー、ニカタツさん、ですか?」

「へ?」

振り返ると歳は20代前半だろうか、かわいい感じの女の子がちょっと俯き加減で立っている。えーと・・・誰?なぜ俺の名前を?そういえば、芸能人の誰かに似てるな・・・誰だっけ?名前が思い出せない。いやそんな事はどうでもいいか。僕は返答に一瞬迷ったが、ここでシラを切っても仕方ないと思い正直に答えた。

気付けば外待ちは僕達だけ。

「そうだけど。何で俺って分かったの?」

「いつもツイッターやブログで見てたんです。雰囲気で何となく」

「いやいやいや、普通当たる訳ないでしょ。こんだけ人居るんだから」

「何人か声は掛けてみたんです。でもハズレでした」

「ええ?!俺以外にも話し掛けてたの?どんだけ勇気あんだよ」

ちょっと記憶が曖昧だが、たしかこんな会話だったと思う。彼女曰く、「明らかにキモい人を探した」そうだ。おいおい、それは極めて正確な情報だが直接本人に伝えなくてもいいだろう。キモくたって普通に呼吸してるし感情だって持ってる一人の人間なんです。もっと優しく扱っていただきたい。

守谷の豚、一本1000円です。

「そういえば、食べるんでしょ?二郎」

「はい、もちろんです」

「デュフフ・・・じゃあオジサンが大豚ご馳走してあげるからね」

「普通にやめて下さい」

そんな冗談を交わしつつ僕達は、カウンターに座るまでの間もおしゃべりを楽しんだ。この記事は書くのに苦労したとか、あの店ではこういう事があったとか、話を聞きながらコクコクと相槌を打つ彼女の横顔はとても可愛かった。こんな子と楽しく会話できるなんて!うぅ・・・ブログやってて良かった!ロマンスの神様どうもありがとう!僕は心の中でガッツポーズを繰り返しつつ涙を流した。

「食券見せて下さーい」

店主さんの言葉でふと我に返る。手元を見ると彼女の食券は「少なめ」、僕のは「大豚」。もちろん、ただの大豚を食べるつもりはない。狙うは「麺増し」、ただ一つ。

食券は撮影し忘れた。

作戦はこうだ。麺増しを彼女の少なめより早く食べきる事。今回は豚入りとはいえ、ダブルじゃないしまぁ余裕だろう。ワシワシと凄いスピードで食べる僕の姿を見て、きっと惚れてしまうに違いない。

「麺増しをペロッと食べちゃうなんて素敵!・・・抱いて!」

なーんて言われちゃったらどうしよう?

「今度は私がペロッとする番よ!ウフフ」

うわー参ったなこりゃ。やっぱそう来ちゃいます?。据え膳食わぬは男の恥って言うし、二郎の後はホテルで「ズンドコベロンチョ」だな!ん、待てよ。守谷市は条例でそういう如何わしい施設は作らない様にしていると聞いた事があるな。仕方ない、柏か取手まで足を伸ばすか・・・。

と、完全に頭がいっちゃってるとしか思えない妄想をしてる間に着丼。

大ラーメン豚入り+麺増し+ヤサイニンニク。

「わー、おいしそう!」

割り箸をちょこんと持ち、小声で「いただきます」している彼女を尻目に僕は猛スピードで食べ始める。フフフ・・・惚れちまうだろ?今すぐ俺の胸に飛び込んで来てもいいんだぜ?おっと、それ以上はまだお預けだ。今は目の前の一杯に集中したい。

傍から見れば、飢えた豚が必死にエサ食ってる様にしか見えないのだろうが、そんな事は意に介さない。最近麺が柔らかめ傾向の気がするが、十分歯応えを感じられるレベルだし、スープを良く吸っているのでとてもうまい。

下に肉塊が隠れていて量的にはダブル位あったのでは。
そして特筆すべきは新しく生まれ変わった豚の存在だ。僕の撮影が下手でこの画像だとよく見えないが、一目見てこれまでの豚とは全然違う。全体的に脂身が程よく乗って甘みを強く感じる。この甘味がキモで、濃い目のスープと合わさって実に味わい深い。

普段、僕が麺増しを食べるときは2つの丼を別々に食べる「セパレートスタイル」なのだが、今回の食べ方は、野菜の入った丼へ麺をダイブさせる「あつもりつけ麺スタイル」。途中、唐辛子の投入もあり、見る見るうちに麺は減っていき、そして完食。ふぅ・・・今日は吸い込みが良かったな。まだ胃袋に余裕あるし、この後控えている「花びら大回転」にも支障はなさそうだ。

いつもおいしい一杯をありがとうございます。

しまった。あまりのうまさに周囲を全然気にしてなかった。そう思い慌てて視線を向けると・・・まだ少なめを必死に食べている彼女の姿がそこにあった。それを見て「作戦成功!」と叫びたい所だったが、どうやらあの様子では僕の食べっぷりに見とれてる余裕なんて無かっただろう。まぁそうだよな、どこの世界にラーメン早く食べる豚に惚れる女が居るんだよ。僕は何を浮かれていたんだ。

「じゃあ、先に店出てるね」

「ふぁ・・・ふぁい」

食べ終わるのを待っていても店に迷惑が掛かるだけなので、彼女を置いて早々に店を出る。扉を開けると冷たい雨が地面を濡らしていた。

ブックオフの喫煙所で雨宿り。

シュボッ。もう15年は使っている愛用のジッポで煙草に火を付け、大きく息を吸い込む。うまいものを食べた後の一服は至福の時間だ。しかし寒いな・・・。コートの襟を立て直し、頬を撫でる冷気に身を震わせる。僕は紫煙をくぐらせながら、二郎で温められた体が急速に冷えていくのを感じていた。

二本目を吸い始めた頃だろうか、店を出た彼女がこちらに小走りでやって来る。

「ニカタツさん食べるのはやーい」

「いやーそういう作戦だったからね」

「???」

「ああっと、何でもない。うん」

「次はどこ行きます?」

「は?」

「ほら、ニカタツさんっていつも連食してるじゃないですか」

「あぁ、まあそうだけど・・・」

「じゃあ行きましょう!何処でも付き合いますよ」

「え、何処でも?何処でもって事はその、何処でも?」

「はい、何処でもです!」

「おいマジかよ!じゃあ・・・デュフフ・・・」

そうして2人は車に乗り込み、「夜の19番ホール」へと向かうのであった。つづく。

・・・なーんて話がある訳ねーだろおい。ぜーんぶ嘘ですよ嘘。そもそも僕タバコ吸わないし。こんな文章を最後まで読んじゃったアナタ、時間を無駄にしましたね。まぁこれを書いた30分、僕も無駄にしましたけど。世の中こんなおいしい話がある訳ないじゃん?守谷二郎はおいしいけどね!

お後がよろしいようで。


住所 茨城県守谷市美園4-1-5 美園ビル1F
電話番号
営業時間 11:30~14:30 18:00~21:00(麺切れ次第終了)
定休日 水曜日(祝日の場合は翌日)
最寄り駅 関東鉄道常総線「南守谷駅」
駐車場 あり
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